住宅不動産の業界歴25年、
2000人を超える不動産売買の相談に関わり、
「自宅マンションを高く売る方法」の著者である関谷がお送りします。
不動産売買契約書で、最も重要な内容に「ローン特約」というものがあります。ローン特約は、購入者が「契約書に記載した金融機関」から、住宅ローンが満額借りられなかった場合、契約が解除になるという内容になります。
だからと言って、安心してはいけない!という話を今回はします。
不動産売買契約書は、主に全国宅地建物取引業協会(全宅)、全日本取引業協会(全日)、大手不動産会社が作成している「FRK」の3つがあります。
いま手元に、当社が利用している全宅と、FRKの書式があるので、下記に画像をローン特約部分をアップします。
目次
全宅のローン特約条項
■テキストでアップします。
(融資利用の場合)
第18条 買主は、この契約締結後すみやかに、標記の融資(I)-1のために必要な書類を揃え、その申込手続きをしなければならない。
2 標記の融資未承認の場合の契約解除期限(I)-1までに、前項の融資の全部又は一部について承認を得られないとき、又、金融機関の審査中に標記の融資未承認の場合の契約解除期限(I)-1 が経過した場合には、本売買契約は自動的に解除となる。
3 前項によってこの契約が解除された場合、売主は、受領済の金員を無利息で遅滞なく買主に返還しなければならない。同時に本物件の売買を媒介した宅地建物取引業者も受領済の報酬をそれぞれ売主・買主に無利息にて返還しなければならない。
4 買主自主ローンの場合、買主は、融資利用に必要な書類を標記(I)-2までに金融機関等に提出し、その提出書類の写しを売主に提出しなければならない。買主が、必要な手続きをせず提出期限が経過し、売主が必要な催告をしたのち標記の融資未承認の場合の契約解除期限(I)-1が過ぎた場合、あるいは故意に虚偽の証明書等を提出した結果、融資の全部又は一部について承認が得られなかった場合には、第2項の規定は適用されないものとする。
FRKのローン特約条項
続いて、FRK書式のローン特約の約款条項をアップします。
■テキストでアップします。
(融資利用の特約)
第17条 買主は、売買代金に関して、表記融資金を利用するとき、本契約締結後すみやかにその融資の申込み手続をします。
2 表記融資承認取得期日までに、前項の融資の全部または一部の金額につき承認が得られないとき、または否認されたとき、買主は、売主に対し、表記契約解除期日までであれば、本契約を解除することができます。
3 前項により本契約が解除されたとき、売主は、買主に対し、受領済みの金員を無利息にてすみやかに返還します。
4 買主が第1項の規定による融資の申込み手続をおこなわず、または故意に融資の承認を妨げた場合は、第2項の規定による解除はできません。
注意点
どこの契約書式になるかは、分かりませんし、約款も不動産会社によっては手を加えるので、しっかりと読んで置く事が必要です。
その中でも買主にとって重要なのが、このローン特約です。
2つの違いはご理解いただけましたか。
全宅:期日が経過したら自動的に解除となる。
FRK:期日までは、解除することができる
大きな違いです。
全宅もFRKも「すみやかに」融資の本申込をしている事が解約に必要な条件となりますので、ダラダラしていて融資申込が遅れて、その期日がきても解除する事はできません。
大きな違いは、「自動的に解除となる」と、期日までは「解除することができる」です。FRKの書式で契約した買主は、期日までに解除する意思を売主に伝えないといけないという事です。
しかし全宅書式でも同様に、伝えておきましょう。
大変なのは訴訟など争いになることです。
手続きを間違えると大変な時間と費用をかける事になりますので、解約する場合は不動産会社と合わせて弁護士にも解約手続きの相談して内容証明郵便を売主に直に送る方がよいでしょう。
仮に不動産会社に伝えても、不動産会社が売主に伝え忘れてしまったら、解除する事はできません。手付解除期日までであれば、手付金の放棄。手付解除期日が過ぎていれば、違約金を売主に支払い、その後は伝達し忘れていた不動産会社と争うことになるでしょう。本当に大ごとになります。
大手の不動産会社が使っているFRK書式の場合は、特に注意が必要です。気をつけて進めていきましょう。
文責:宅地建物取引士、株式会社関谷健不動産販売市会社代表取締役 関谷健