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囲い込みが、再び増えている

最近、不動産会社による「囲い込み」が少し増えてきているように感じます。

 

統計的に増えていると確認したわけではありません。私自身が日々の売買仲介業務や、お客様からの相談を通じて感じていることです。

 

背景には、不動産の取引件数が減り、営業現場にプレッシャーがかかっていることがあるのではないかと思っています。

 

会社から求められる売上目標は変わらない。しかし、これまでと同じように仕事をしていても、その目標には届かない。

 

そうなると、一つの取引から得られる利益を少しでも大きくしたい、という考えが強くなってしまうのかもしれません。

 

先日、まさにそんなことを考えさせられる相談がありました。

 

 

 

仲介手数料を50万円安くする代わりに

ご相談いただいたのは、約7,000万円のマンションを売却中のお客様です。

 

8月から売りに出しているものの、いまだに一件も内覧がないというお話でした。

 

詳しく伺うと、売却を依頼している不動産会社から、こんな提案を受けていたそうです。

 

「仲介手数料を少し安くするので、一般媒介契約にしてください。広告はSUUMOと当社のホームページに掲載します」

値引き額は約50万円。税込では55万円です。

 

7,000万円の物件であれば、通常の仲介手数料の上限は税込237万6,000円ですから、決して小さくない値引きです。

 

お客様も、ご自身がマンションを購入した際にSUUMOで物件を探した経験がありました。

 

だから、次に自宅を買う人もSUUMOを見るだろう。そこに掲載されていれば十分ではないか。

そう考えて、この提案を受け入れたそうです。

 

一見すると、合理的な話にも聞こえます。

しかし、私が問題だと思ったのは、その物件がレインズに登録されていなかったことです。

 

 

 

SUUMOに掲載していれば十分なのか?

レインズとは、不動産会社同士が売却物件の情報を共有するためのネットワークです。

 

SUUMOが一般の購入希望者に向けた広告媒体であるのに対し、レインズは全国の不動産会社が物件を紹介するための重要な仕組みです。

 

レインズに登録すれば、売却を依頼した会社だけでなく、ほかの不動産会社も自社のお客様にその物件を紹介しやすくなります。

 

つまり、売却の窓口を広げることができるのです。

 

もちろん、SUUMOだけで買主が見つかることもあります。

 

しかし、だからといって、最初からレインズを使わずに販売することが売主にとって最善なのでしょうか。

今回のお客様は一般媒介契約です。

 

一般媒介契約にはレインズへの登録義務がありません。そのため、レインズに登録しないこと自体が直ちに違法になるわけではありません。

 

ただし、合法であることと、お客様の利益にかなっていることは別の話です。

 

私はここに、不動産仲介という仕事の大きな問題があると思っています。

 

 

 

8月から10月まで、一件も内覧がない

今回、さらに気になったのは販売開始の時期です。

 

8月から売却を始めて、10月になっても一件も内覧がない。

 

しかも、その間に首都圏の中古マンション市場では、物件によって買主の動きが鈍くなっていると感じる場面も増えています。

 

本来であれば、販売を開始した直後の反応を確認しながら、広告や販売方法を柔軟に見直すべきでしょう。

 

それにもかかわらず、レインズに登録しないまま販売を続けていたそうです。

 

なぜレインズに登録しなかったのか、その会社の本当の意図までは分かりません。

 

しかし、自社で買主を見つければ、売主と買主の双方から仲介手数料を受け取る「両手仲介」になる可能性があります。

 

仮に50万円の手数料を値引きしても、両手仲介が成立すれば、それ以上の利益を得ることができます。

 

もちろん、両手仲介そのものが悪いわけではありません。

 

問題は、両手仲介を優先するあまり、売主の売却機会を狭めてしまうことです。

 

これが、いわゆる囲い込みの問題です。

 

今回、実際に囲い込みを目的としていたかは断定できません。ただ、結果として販売経路が限られ、一件も内覧がないまま時間が過ぎている。

 

私は、この状況を非常に残念に思いました。

 

 

 

本当に売主のことを考えていたなら

もっと理解できなかったのは、販売方法を見直す提案すらなかったことです。

 

8月から販売を始め、すでに2か月以上が経過している。

 

それでも内覧がなければ、通常は何かを変えなければならないと考えるはずです。

 

例えば、

「これまでの販売方法では十分な反響を得られていません。仲介手数料は当初のお約束のままで構いませんので、レインズにも登録して、ほかの不動産会社にも積極的に紹介してもらいましょう」

そんな提案があってもよかったのではないでしょうか。

 

一度値引きした仲介手数料を元に戻すことはできなくても、売主のために販売方法を変えることはできます。

ところが、その提案がなかったというのです。

 

お客様は、もうすぐ媒介契約の更新時期になるため、その際にレインズに登録してもらうよう頼もうと考えていらっしゃいました。

 

しかし、私は契約を更新しないことを、かなり強い言葉でお勧めしました。

 

なぜなら、ここまでの対応を考えると、仮にレインズへ登録したとしても、本当にほかの不動産会社に積極的に紹介してくれるのか、疑問が残ったからです。

 

レインズに登録することと、広く流通させる意思があることは、必ずしも同じではありません。

 

他社からの問い合わせや内覧希望に適切に対応することまで含めて、初めて売主の利益につながるのです。

 

ちなみに、私はこのお客様に、当社への依頼を勧めたわけではありません。

 

当社でお引き受けするかどうかとは関係なく、まずは依頼先を変えた方がよいとお伝えしました。

 

 

 

専任媒介がよいのは、担当者を信頼できる場合だけ

私は普段、マンション売却では専任媒介契約をお勧めすることが多いです。

 

ただし、そこには必ず条件があります。

「担当する営業マンが信頼に足る人物であること」

これが何より大切です。

 

専任媒介契約であれば、レインズへの登録義務があり、定期的な業務報告も義務付けられています。

 

しかし、制度が整っているからといって、それだけで安心できるわけではありません。

 

最終的には、担当する営業マンが何を大切にして仕事をしているか、という問題になります。

 

私は、仕事の順番が大切だと思っています。

 

まず、お客様の利益を考える。

お客様に誠実に向き合い、できる限りのことを尽くす。

そして、お客様に利益を提供した結果として、自分たちも報酬をいただく。

 

この順番です。

少し古い言葉かもしれませんが、そこには「仁義」や「愛」といったものも必要だと思っています。

 

お客様が大切な資産を託してくださっているのですから、その信頼に応えようとする姿勢がなければ、どんなに営業成績がよくても、よい営業マンとは言えないのではないでしょうか。

 

逆に、自分たちの利益を先に考え、そのためにお客様の選択肢を狭めてしまう。

 

そういう仕事の仕方では、一時的に大きな利益を得ることはできても、長く信頼されることは難しいと思います。

 

これからは、一つの会社に長く勤め続けることが当たり前ではなくなるでしょう。

 

だからこそ、会社の看板ではなく、営業マン個人がどれだけ信頼されるかが重要になってくるはずです。

 

目先の利益よりも、長く続く信頼関係を大切にする。

 

その方が仕事としても、人生としても、ずっと豊かなものになるのではないかと私は思っています。

 

 

 

本当に信頼できる営業マンは、何を報告してくれるのか

では、売主は営業マンの何を見て、その人が信頼できるかを判断すればよいのでしょうか。

 

これは非常に難しい問題です。

 

最初の面談では、どの営業マンも感じがよく、熱心に話してくれるでしょう。

 

しかし、私が特に重要だと思っているのは、販売を始めてから、どのような報告をしてくれるかです。

 

例えば、内覧が入らなかったとします。

 

そのときに「今週も内覧はありませんでした」と報告するだけでは、十分とは言えません。

 

同じマンションでは何件売りに出ているのか。

新しく販売を始めた物件はあるのか。

価格を下げた物件はどれくらいあるのか。

売りに出ていた物件が掲載終了になったのか、実際に成約したのか。

近隣の競合物件と比べて、自分のマンションはどのような位置にあるのか。

 

そういった周囲の状況まで細かく観察し、客観的な資料とともに報告してくれる営業マンであれば、売主も納得して判断することができます。

 

「売れないので値段を下げましょう」

これだけでは、単なる営業マンの意見です。

 

しかし、

「近隣で新たに3件の競合物件が出てきました。そのうち2件は当物件より条件がよく、価格も低く設定されています。さらに、先月価格を下げた物件に問い合わせが集まっているようです」

 

といった説明があれば、価格を見直すべきかどうかを、売主自身が考えることができます。

 

もちろん、競合物件の反響数など、他社の内部情報まで正確に把握できるわけではありません。

 

それでも、確認できる情報を集め、推測と事実を分けて説明することはできます。

 

不動産会社の役割は、単に広告を掲載したり、内覧を案内したりすることだけではありません。

 

売主が納得して判断できるだけの情報を提供すること。

 

私は、それも不動産仲介の大切な仕事だと思っています。

 

 

 

値引きより、大切なもの

今回のお客様は、仲介手数料が約50万円安くなるという理由もあって、現在の不動産会社に売却を依頼しました。

 

しかし、結果として、8月から10月まで一件も内覧がないまま時間が過ぎてしまいました。

 

もちろん、レインズに登録していれば必ず売れたとは言えません。

 

ただ、もっと多くの購入希望者に物件を知ってもらう機会はあったかもしれません。

 

そして、不動産売却において、時間は決して取り戻せないものです。

 

一度逃した販売の好機を、後から取り戻すことは簡単ではありません。

 

だからこそ、目先の仲介手数料の値引きだけで、不動産会社を選んでほしくないのです。

 

大切なのは、値引きをしてくれる会社ではなく、少しでもよい条件で売れるように、誠実に努力してくれる会社を選ぶことです。

 

その営業マンは、自分たちの利益よりも、売主の利益を優先してくれるのか。

 

都合のよい話ばかりではなく、厳しい現実もきちんと伝えてくれるのか。

 

販売状況が悪くなれば、客観的な根拠を示し、改善策を提案してくれるのか。

 

そして何より、約束した仕事をきちんと実行してくれるのか。

 

不動産会社選びでは、こうした点をぜひ見ていただきたいと思います。

 

不動産の売却は、人生で何度も経験することではありません。

 

だからこそ、営業マンの言葉だけでなく、その仕事への姿勢を見極めていただきたい。

 

お客様の利益を第一に考えること。その結果として、私たち不動産会社も利益をいただくこと。

 

当たり前のことですが、こういう仕事の順番を、私はこれからも大切にしていきたいと思います。

 

 

株式会社関谷健不動産販売 代表取締役 関谷 健

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